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ChatGPTに「おすすめ教えて」と聞く人はほぼいない — 実ログ1万件の定量分析

ChatGPT実ログ11,349件(日本語2,500件含む)を7軸で定量分析。「おすすめ」の出現率はわずか0.28%。ユーザーが実際に使う文言と、企業が想定する文言のギャップを数値で示す。

ChatGPTユーザー行動クエリ分析AEOAI検索定量分析

この記事は誰のためか

「AI検索に出たい」と思ってコンテンツを作っている人へ。

「おすすめの〇〇は?」というクエリを想定してFAQやコンテンツを設計していないだろうか。あるいは「〇〇 おすすめ」でSEO記事を書き、それがそのままAI検索にも効くと考えていないだろうか。

その想定は、データで否定される。

この記事では、ChatGPTの実際の利用ログ11,349件(うち日本語2,500件)を7軸で定量分析した結果を公開する。ユーザーが「本当はどう聞いているのか」を数値で示す。


調査概要

項目内容
分析対象WildChat, ShareGPT, OpenAssistant, PRISM(全てオープンデータ)
総会話数11,349件 + 日本語 2,500件
分類手法7軸ルールベース分類(質問形式・話題・指名性・制約・推薦意図・プロンプト技法・長さ)
再現性PYTHONPATH=src python -m uqa.cli all で完全再現可能

全てオープンデータに基づく。企業利用・有料版ユーザーは含まれにくいという限界がある点は留保として明記する。


Finding 1: 日本語ユーザーの78%は「質問」しない

最初の発見は、日本語ユーザーの質問形式そのものが英語と根本的に異なることだ。

質問形式英語日本語
叙述型(命令・依頼)52%78%
What(何)24%15%
How(どう)18%4%
Which(どれ)7%3%
Why(なぜ)4%5%

日本語ユーザーの78%は疑問形を使わない。「〜して」「〜教えて」「〜ください」という命令・依頼形式で入力する。

疑問符「?」の使用率は英語85%に対し、日本語はわずか46%

これがAEOに意味すること

「〇〇とは?」「〇〇はどうすればいい?」というFAQ形式でコンテンツを設計しても、日本語ユーザーの実際の入力パターンとは噛み合わない。AIが引用するコンテンツは、ユーザーの入力に対する「回答として適切かどうか」で選ばれる。入力パターンを知らずにコンテンツを設計することは、的の位置を知らずに矢を放つようなものだ。


Finding 2:「おすすめ教えて」はほぼ存在しない

これが最も重要な発見だ。

推薦系表現出現率
best / top(英語)2.6%
比較して / 違い(日本語)1.16%
recommend(英語)0.7%
おすすめ(日本語)0.28%

日本語2,500件中、「おすすめ」が含まれていたのはわずか7件

しかもその7件の多くは推薦質問ですらない。「ブログ記事に"おすすめメーカー"の項目を含めて書いて」のように、文章生成タスクの一部として登場しているだけだ。

推薦意図の合計でも、英語4.4%に対して日本語は0.56%

「おすすめ」対策の落とし穴

多くのAEO記事やSEO施策が「おすすめ」をキーワードに設定している。しかし実データでは、ユーザーはそもそも「おすすめ」という言葉をAIに対して使わない。

代わりに使われるのは:

  • 「〇〇について教えて」
  • 「〇〇と△△の違いは?」
  • 「〇〇を比較して」

「おすすめ」をキーワードに張ると、実際の聞き方のほぼ全てを取りこぼす。


Finding 3: 日英で「何を聞くか」の景色が違う

話題英語日本語
コーディング18-24%5.6%
ロールプレイ・創作13-19%10.6%
文章作成7-9%6.2%
恋愛1-2%5.8%
ビジネス4-8%4.1%
翻訳・語学0.5-0.7%4.2%

日本語ユーザーのAI利用は、英語圏とは質的に異なる。

  • 恋愛相談が3倍: 日本語5.8% vs 英語1-2%
  • コーディングは1/3以下: 英語はChatGPTをコーディングツールとして使うが、日本語は創作・相談ツール
  • 翻訳が7倍: 日本語4.2% vs 英語0.5-0.7%

AEO示唆

日本市場でAI検索対策を行うなら、英語圏の事例をそのまま適用してはいけない。日本語ユーザーは「調べる」よりも「相談する」「お願いする」使い方が主流であり、コンテンツ設計もそれに合わせる必要がある。


Finding 4:「プロンプトエンジニアリング」は幻想

プロンプト技法利用率
丁寧表現(please/ください)16.0%
act as(なりきり)4.2%
コード片添付2.7%
urgency(急いで等)2.5%
step by step1.5%
フォーマット指定1.0%
専門家として0.5%
ELI5(わかりやすく)0.5%

最も使われている「テクニック」は、テクニックですらない。丁寧表現(please / ください)が16%で圧倒的最多。

日本語に限ると丁寧表現は**32-39%**に跳ね上がる。英語の約2倍だ。一方、act as等の「英語式プロンプトテクニック」はほぼゼロ。

ユーザーの大多数は、プロンプトを工夫していない。普通の言葉で、普通に聞いている。


Finding 5: プロンプトの長さは話題で決まる

話題初回発話の中央文字数
画像生成701字
ロールプレイ283字
文章作成198字
コーディング166字
相談・悩み72字
旅行・グルメ69字
恋愛61字

創作・実装系は長文で詳細に指示する一方、相談・推薦系は一言で聞く。

恋愛61字、旅行69字、相談72字。

AEO示唆

短い相談クエリに対しては、コンテンツ側が文脈を補完する必要がある。「〇〇 教えて」という61字の入力に対して、AIが適切な回答を構成できるだけの情報密度と構造をコンテンツに持たせなければ引用されない。


Finding 6: 日本は「商品名を出して聞く」国

国別の指名性比較(WildChat上位5カ国、IPジオロケーション由来のため参考値):

一般(固有名なし)商品指名ブランド指名
日本28%51%21%
インド35%35%30%
カナダ51%31%18%
米国54%28%18%
中国66%14%20%

日本は商品指名率が12カ国中最多の51%

さらに、日本は制約あり率が**58%**と最も高い。時期(37%)や用途(31%)を添えて、具体的に深く聞く傾向がある。

AEO示唆

日本語ユーザーは「〇〇(商品名)の〇〇について教えて」と具体的に聞く。ブランド名・商品名がクエリに含まれる確率が高いため、AIがその商品について回答を構成する際に引用されるコンテンツを自社で持っているかどうかが決定的に重要になる。


まとめ: AI検索対策の前提を見直す

この分析で明らかになった6つの事実:

  1. 日本語ユーザーの78%は疑問形を使わない — FAQ形式のコンテンツ設計を再考せよ
  2. 「おすすめ」の出現率は0.28% — 存在しないクエリに最適化するな
  3. 日本語ユーザーは相談・創作目的が主流 — 英語圏の事例をそのまま適用するな
  4. プロンプト技法はほぼ使われていない — ユーザーは普通の言葉で聞いている
  5. 相談系クエリは61-72字 — 短い入力に対応できるコンテンツ構造が必要
  6. 日本は商品名を出して聞く文化 — 自社商品に関する情報を自社で持て

AI検索で引用されるためのコンテンツ設計は、ユーザーが実際にどう聞いているかのデータから逆算すべきだ。思い込みや「よくある検索キーワード」の延長線上では、AIが参照するコンテンツにはなれない。


データソースと留保

  • 全てオープンデータ: 公開された会話のみ。企業利用・プライベートな相談・有料版ユーザーは含まれにくい。クローズドデータとは異なる可能性が高い
  • ルールベース分類: NER不使用。指名性・対象は概算値。話題の約半数が「その他」。精密化にはLLMクラスタリングが必要
  • 日本語データの汚染: WildChat日本語2,500件のうち41%が翻訳タスク、12%がスパム。クリーン後1,053件に基づく
  • 国情報の限界: IPジオロケーション由来(VPN・プロキシ込み)。「日本語 = 日本から」ではない

この分析の目的は、「ユーザーがAIにどう聞いているか」の全体像を粗く掴むことにある。個別の数値の精度よりも、定性的なパターンの発見に価値がある。